〜繰り上げ・繰り下げ受給をどう判断するべきか〜
定年退職を迎えて、まず誰もが直面するのが「年金、いつから受け取るのか問題」ではないでしょうか。
私は60代の仲間と集まると、ほぼ毎回この話題になります。
「俺は繰り下げで65歳まで我慢したよ。1カ月で約1,000円増えるって聞いたしな」
「いやいや、うちは変な仕事で消耗したくないし家計も厳しいから、62歳から繰り上げで受給開始したよ」
──あなたは、どちらの考えに共感されるでしょうか?
この記事では、「少しでも多い方が良い」のか、「早くもらって安心を取る」のか。
定年後のリアルな生活設計と照らし合わせながら、年金受給のタイミングについて徹底的に考えてみます。
最終的に「今回の考察による最適開始年齢は?」という答えもzぃ分なりに考えてみました。
ぜひ、今後の判断材料にしていただければと思います。
年金の受給開始は原則65歳。でも60〜75歳の間で選べる
まず前提として、日本の公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は原則65歳からの受給が基本です。
ただし、受給開始年齢は「60歳から繰り上げる」ことも、「75歳まで繰り下げる」ことも可能です。
繰り上げを選べば、最大で5年早く(60歳から)受給できます。
反対に、繰り下げを選ぶと、最大で10年遅らせ(75歳まで)、受給額を大きく増やすことができます。
それでは実際に、受給金額がどれだけ違ってくるのかを見てみましょう。
繰り下げ受給のために、変な仕事で消耗するのは人生の無駄ではないか?
最近よく耳にするのが、「年金を75歳まで繰り下げて、月18万円以上もらいたい」という話です。
確かに増額率84%は魅力です。
ですが、そのために70代まで働き続けなければならないとしたら、どうでしょうか?
「生活費のために再雇用されたけど、やりがいのない単純作業で毎日が苦痛」
「立ち仕事で足腰が限界。でも年金がまだもらえないから辞められない」
そんな声を、実際に再就職先で何度も耳にしました。
中には、職場の人間関係に疲れて早期退職してしまう人もいます。
「繰り下げて年金を増やすために、“変な仕事”で心身を消耗してしまう」──
これは本末転倒ではないでしょうか。
人生の残り時間は限られています。
ましてや定年後の60代・70代というのは、貴重な「第二の人生」です。
「わずかな年金の上乗せのために、人生の残り時間を消費してまで我慢する意味があるのか?」
そう自問することも、大切なのだと思います。
繰り上げ・繰り下げ受給の金額シミュレーション
【例】65歳で月10万円の年金を受け取る予定の人が…
受給開始年齢 | 月額 | 増減率 | 年間受給額 |
---|---|---|---|
60歳(繰り上げ) | 約70,000円 | -30% | 約84万円 |
65歳(基準) | 100,000円 | 0% | 120万円 |
70歳(繰り下げ) | 約142,000円 | +42% | 約170万円 |
75歳(繰り下げ最大) | 約184,000円 | +84% | 約220万円 |
※月額・年間額は目安。実際は個人の加入状況等により異なります。
ここで驚くべきは、1カ月遅らせるごとに年金額が約0.7%ずつ増加する点です。
これはざっくり言うと、「1カ月で約1,000円増える」計算です(10万円の場合)。
「少しでも多い方が良い」と考える方にとって、繰り下げ受給はかなり魅力的に見えるかもしれません。
ただ私はこう思いました、「たったそれだけしか増えないんだ、、、。
1年間我慢して需給を遅らせると、月額12000円増えるという事になります、そのためにいわゆる高齢者専用の、くだらない誰でもできる仕事で貴重な時間を浪費して、そんな価値あるんかなと思いました。
でも、「積立金を回収できる年齢」は?
では、繰り上げ or 繰り下げ受給、どちらが“お得”なのか?
ここで重要なのが、「損益分岐点」、つまり「元が取れる年齢」です。
先ほどの例をもとに計算すると──
- 繰り上げ(60歳開始)と65歳開始の損益分岐点は【77歳前後】
- 繰り下げ(70歳開始)と65歳開始の損益分岐点は【81歳前後】
つまり、77歳以上生きれば、繰り上げよりも65歳開始の方が得です。
81歳以上生きれば、65歳よりも繰り下げの方が得になります。
平均寿命を考えると──
- 男性:81.05歳
- 女性:87.09歳(2023年・厚労省統計)
多くの方にとって、繰り下げの方が「トータル受給額が多くなる」可能性が高いと言えます。
「定年後は定期収入が恋しい」現実的な気持ち
ただし、数字だけでは割り切れないのが人生です。
「定年後は定期収入が恋しい」──この言葉に、多くの方がうなずかれるのではないでしょうか。
再就職やパート収入がなくなったとき、月に7万円でも「ある」と「ない」とでは大違いです。
家賃や光熱費、健康保険、食費など、年金しか収入源がない生活では、1日1,000円が死活問題になることも。
また、繰り下げをしても、途中で病気になったり、予期せぬ事情で受け取る前に亡くなってしまえば──
頑張って「繰り下げた分」は全く戻ってきません。
つまり、老後の「安心」と「確実性」を求めるなら、繰り上げ受給も十分に“あり”なのです。
どう判断すればよいのか? 現実に即した3つの視点
繰り上げと繰り下げ。あなたはどちらを選ぶべきか。
次の3つの観点から判断すると、現実的な選択がしやすくなります。
①現在の生活費・貯蓄状況
→ 生活がギリギリ、貯金が少ないなら、迷わず繰り上げ。
→ 十分な預貯金や副収入がある人は、繰り下げも選択肢。
②健康状態・家系の寿命
→ 持病がある、家族がみな短命なら繰り上げ。
→ 長寿家系、元気な60代なら繰り下げも可能性あり。
③今後のライフスタイル
→ 毎月安定収入がほしいなら繰り上げ。
→ 旅行や趣味を70代以降に楽しみたい人は繰り下げで余裕をつくるのも一案。
年金を1カ月遅らすと本当に約1000円増える?
この疑問、実は本当です。
2022年度から、繰り下げ受給の増額率は月0.7%になりました。
つまり、月10万円の年金なら、1カ月で700円。
12カ月で8,400円、1年で約1万円近く増えるわけです。
10年間繰り下げて75歳から受け取ると、最大84%増しになるというのは驚きですね。
ですが──
「受け取るまでの10年の生活費はどうする?」という現実も、忘れてはいけません。
今回の考察による最適開始年齢は?
ここまでさまざまな視点から考えてきました。
最終的に「いつ年金を受け取り始めるべきか?」の答えは──
✅ “基本は65歳開始をベースに、自分の状況に応じて前後させる”
この一文に尽きると思います。
・貯金があり、長寿が期待できる人 → 67〜70歳の繰り下げ
・生活に余裕がない人、健康不安のある人 → 62〜64歳の繰り上げ
・標準的な家庭 → 65歳受給開始
年金は一度受給開始すると、後から変更ができません。
だからこそ、慎重に、しかし“先延ばしにしすぎず”決めることが大切です。
最後に:少しでも多く? それとも今すぐ安心?
人生100年時代。老後資金の「正解」は一つではありません。
「少しでも多い方が良い」と繰り下げを選ぶ人も、
「毎月の安心が欲しい」と繰り上げを選ぶ人も、
それぞれの選択に「正解」はあるのです。
大切なのは、「自分の人生設計」と「家計事情」と「健康状態」に合わせて考えること。
この記事が、あなたの年金受給のタイミングを考える一助になれば幸いです。
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