60代からの“ちょっとしたモヤモヤ”に向き合ってみる
「お支払いは振込でお願いします」と言われて
最近は、商品購入やサービスの対価を「振込で」と言われる場面が増えました。
病院、通販、町内会費、ちょっとした貸し借り…。
でも、ここでふと思うのです。
「振込手数料って、誰が払うの?」
数百円の差に過ぎないとはいえ、
年金暮らしの60代にとっては、あなどれない出費。
しかも、振込を「お願いしてきたのは向こう」なのに、
なぜこちらが手数料を払わなきゃいけないのか?
…そんなモヤモヤを感じること、ありませんか?
民法では「債務者が負担」とあるけれど
法律ではどうなっているのか、見てみましょう。
民法第485条には、次のように記されています。
「弁済は債権者の現在の住所においてしなければならず、
費用は債務者の負担とする」「弁済の費用は債務者が負担する」
つまり、「お金を支払う側(債務者)」が手数料を払うのが原則になってるんです。
このルールだけ見ると、「ああ、じゃあ払う側が悪いのね」と思ってしまいがちですが、
実際のやり取りには、もう少し“人間らしい事情”があるように思います。
言い出したのは向こうなのに?
世の中には、「それ、あなたが決めたことでしょう?」と感じてしまう場面が多々あります。
振込手数料についても、まさにその典型例です。
「お願いされた側」が手数料も払うって納得できる?
たとえばこんな場面。
■ 町内会から「会費は振込でお願いします」と言われた場合
会費を払うのは義務だとしても、振込という手段を選んだのは町内会側です。
でも、「振込手数料は各自でお願いします」となっている。
これ、ちょっと理不尽に感じませんか?
■ ネットで個人から物を買ったとき
出品者が「振込でお願いします」と言ってきて、
そのうえ「手数料もご負担ください」って……。
「そっちが振込指定してきたんだから、そっちが手数料払ってよ」
そう言いたくなる気持ちも、よくわかります。
■ たとえば、個人間の取引で…
たとえば、ネットオークションやフリマアプリなどで個人と取引をしたとき。
商品代金は3,000円。先方からは一言。
「お支払いは銀行振込でお願いします。手数料はご負担ください」
……と。
この場合、銀行振込という手段を選んだのはあちら側です。
こちらが「現金書留にしましょうか?」とも言っていないし、
「直接手渡しがいい」と言ったわけでもない。
なのに、なぜその**“あちらの都合”に伴う費用**まで、
こちらが負担しなければならないのでしょうか?
■ サービス提供者側が「振込でお願いします」と言ってくる場合
たとえば小さなリフォーム会社に、ちょっとした工事を頼んだとき。
工事は無事終わり、後日電話でこう言われました。
「今回はお世話になりました。お支払いは弊社口座へお振込みでお願いします」
「なお、振込手数料はお客様ご負担でお願いいたします」
……え?
こちらは、振込という方法を希望していませんでした。
むしろ、**「集金に来てもらったほうが楽だった」**くらいです。
それなのに、言い出したのは業者側であるにもかかわらず、手数料の負担はこちら。
これって、ちょっと筋が通らないように思えませんか?
言い出しっぺの責任って、昔から大切だった
私たちの世代は、**「言い出した方が責任を持つ」**という考え方に慣れ親しんできました。
たとえば――
- 「旅行に行こうよ」と言い出した人が、下調べをしてくれた
- 「飲みに行こう」と誘った人が、お店を予約してくれた
- 「割り勘で」と言いつつ、端数は言い出した人が出してくれた
こういう、**ちょっとした“気遣い”や“礼儀”**を、
私たちはたくさん見てきたし、実践してきたのではないでしょうか。
だからこそ、「あちらが言い出したのに、こちらが振込手数料まで負担する」
という流れに、どうしてもモヤモヤを感じてしまうのです。
費用をかけさせたのは誰か?という視点が抜け落ちている
現代では、「とにかく手軽で便利な方法を選ぶ」ことが当たり前になっています。
しかしその裏で、
- 誰の都合でその手段が選ばれたのか
- 誰がそれによって“追加の費用”を負担するのか
という、とても人間的で繊細な視点が、
いつのまにか置き去りにされがちです。
言い出した方が費用を持つ」という提案もしてみよう
もし、相手から「振込でお願いします。手数料はご負担ください」と言われたときは、
勇気を出して、こんなふうに切り出してみてもいいかもしれません。
「今回はそちらのご指定の方法ですので、
振込手数料についてもご考慮いただけると助かります」
もしくは、
「こちらから現金書留や現地支払いも可能ですが、いかがでしょうか?」
“言い出した側が負担する”という考え方をやんわりと伝えるだけで、
相手も「あ、なるほど」と思ってくれるかもしれません。
このように、「言い出したのはあちら側」という視点を加えることで、
単なる金額の話ではなく、人と人との信頼や礼儀の話にもつながっていきます。
「言い出した方が負担」こそ、自然なマナーでは?
社会人として長く働いてきた私たちだからこそ、
**合理性だけでなく“納得できるルール”**に価値を感じます。
つまり、「言い出した方が手数料を払うべき」という考え方には、
こんな根拠があります。
【1】選択肢を決めたのは相手だから
→「支払い方法」を指定したのは受け取る側。
→ならば、その方法にかかるコスト(手数料)は受け取る側が持つべき。
【2】実質的な“委託”に近いから
→振込を指定されたということは、
→「相手の都合で手続きを任された」と言ってもいい。
【3】感情のバランスがとれない
→何も言わずに「手数料も負担してください」と言われると、
→まるで“取引先と顧客”のような冷たい関係性に感じてしまう。
あえて「常識」を見直してみると…
実際、海外では「送金にかかる手数料は受け取り側が負担」
という文化の国もあります。
日本では「払う側が払う」という慣習が根付いていますが、
その常識、本当にいつでも正しいのでしょうか?
手数料の違いで“損した気分”になることも
具体的な金額で見てみましょう。
ケース | 振込手数料 | 受取額 |
---|---|---|
Aさん:他行へ3万円振込 | 550円 | 相手に3万円届く、Aさんの支払い総額は30,550円 |
Bさん:同じ銀行間で振込 | 0円〜220円 | 同じく3万円届く、支払いはそのまま30,000円 |
同じ金額を相手に送るだけで、最大550円の差が出ることも。
「なんでこっちだけ損してるの?」という気持ちにもなりますよね。
「言いにくいけど、言っていい」こと
こうした手数料に関する話題って、
なんとなく「お金の話は下品だ」と思ってしまいがちですが、
むしろ早めに話しておいたほうが、お互いに気持ちがいいものです。
たとえば…
- 「そちらの指定の方法なので、手数料込みでお願いできますか?」
- 「他の支払い方法もありますか?」
- 「ご負担がなければ、別の方法にしていただけると助かります」
こんな風に伝えると、角が立ちにくく、
しかもこちらの気持ちも汲んでもらいやすくなります。
振込手数料にモヤモヤしたら、“人間らしく”話してみよう
ここまでのポイントをまとめます。
- 振込手数料は原則、支払う側が負担(民法)
- でも、相手が支払い方法を指定したなら、その負担は相手側に求めても不自然ではない
- 「言い出した側が手数料を持つべき」という考え方も、マナーとして自然
- 手数料の額はばかにならない。使う銀行によっても違いがある
- 相手とモヤモヤが生まれる前に、遠慮せずやんわり伝える工夫が大切
お金のことを、もっと「気持ちよく」話せる社会へ
60代は、人生の経験も人間関係の知恵も豊富な世代です。
だからこそ、ただの「手数料」の話でも、
もっとスマートに、気持ちよく伝える力を持っています。
「ちょっと言いにくいけど、話してよかった」
「小さなことだけど、ちゃんと納得して払える」
そんな人付き合いができると、
お金の話も“人間関係の潤滑油”になっていくのかもしれません。
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